0311
北比良の白峰そびえ波声に小路でひとり詩のこと想う
0312
北比良の白峰や背には波の声
0313
桜から灰降る街を酔い歩き
0314
ツバメおり陽がしずむ幣舞橋や
0315
満員の小田急線で目に入る他人のスマートフォンの恋文
0316
どん底にやさしく乾いた眼差しよこれが愛だよカウリスマキよ
0318
菜の花が見える車窓に春を知る
0319
彼岸に祖父母いた家で本探す
0320
花を待つ雨を聴きつつ夏想う
0321
電車とまる風にあおられなごり雪
0322
冷雨かな寝つつ起きつつ魂が追いつくを待つ長旅のあと
0323
やる気なき日に本棚を仮設する知の道しるべ気を立て直す
0324
北向きの窓に漏れ入る春の日よ
0325
向こう岸自転車たちが走りゆく日曜の午後三月おわり
0326
日が暮れて川面さざめく橋げたに列車轟く絶えることなく
0327
桜の下ちょこんとオオイヌノフグリ
0328
遠いものとつながるために撮る女箱庭にして好きに書く男
0329
旅前に増えたハコがなくなって旅出たハコで見る下コント
0330
桜散る田舎寺そこは海石榴市ただの広場に古代エキゾチズム
0331
春の名は雑草ノオトめくり知る
0401
ゲド想う畦のカラスノエンドウに
0402
オギョウつむ日向ぼっこの病み上がり
0403
すみれ咲く疎水のコンクリートの隙
0404
草の名を知り虫の名も知りたくてあの鳥に食われる魚の名も
0405
坂道のむこう山の中にぽつり桜一木が咲く満開に
0406
十八の春に住みしアパートに十八年して見舞い訪ねる
0407
マカオ行く若人へタンポポあげた
0408
いつもそば歩いてみてる学校の校門またぐ選挙の日かな
0409
食卓に父とふたり面映ゆく母いない朝にりんごの味
0410
太陽を見おろす鴈や観覧車
0411
階段に家人の炊いた筍や
0412
雨上がり春の日浴びるキャミソール
0413
先人の言葉をうつす春の宵
0414
濃淡の緑が萌える京の山
0415
自転車で目に入ってくるタンポポ歩くと目に入ってくるハコベ
0416
若葉ふく銀杏の根に枯れタンポポ
0417
すずめの子加茂の河原で逃避行
0418
花隈の名を知るひばりか高架下
0419
行く春や若葉に透けて息を呑む
0420
並木道あの花はなにハナミズキ
0421
山々の緑の波よ藤の青
改
吉田山みどりの海に浮かぶ藤
改
黄緑の吉田の山に浮かぶ藤
0422
春の寿歌なりやまるとさんかく
0423
あゝ四月たみの博さを歩くあるく
0424
春眠はゆめやうつつやとけて夢
0425
宵闇に眠りを醒ます躑躅の香
0426
夕日さし黄緑かがやく加茂河原
0427
あおがえる言の葉たぐる千里かな
0428
石楠花や藤のうしろに舟の声
0429
居酒屋を探して歩く五月かな
0430
祈るように薬を飲む四月おわり
0501
若夏の朝に洗われ人を待つ
0502
五月雨に心重たし低気圧